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「顔色が悪いの、ずっと気になっていたんです。お手洗いに行ったきりなかなか戻ってこなかったので、具合でも悪くしたのかと……」
「……御堂さん」
「すみません、僕ばかり出しゃばってしまって。僕は戻りますが、三神峯さんはもう少し休んでいてくださいね」
気の強い垂れ目が柔らかく微笑んで、去り際にぽん、と肩を叩かれた。男性に触られたときはあれほど嫌だったにもかかわらず、御堂に触れられるのは不思議と嫌ではなかった。
御堂はきっと誰に対しても些細なことにまで気にかけ、面倒を見る性格なのだろう。若くして営業一課の主任に就任し、上からも部下からも信頼されているという理由がわかるかもしれない。
「……いいなあ」
ぽつりと零した言葉は、御堂の部下に対してだった。
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