ep.10 *

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 * * * 「ん……」  カチカチと時間を刻む時計の針の音が静かな部屋に響く。三神峯が「こんなにいいマンションじゃなくてもいいんだけどね」と言っていただけあって機密性がとにかく高いようで、窓を閉めていれば外の車通りの音などまったく聞こえない。もぞもぞと腕の中で身じろいだ三神峯に、御堂は閉じていた目を開けた。  あれから電子レンジを借りて簡易的に蒸したタオルを用意し、吐き出した欲や汗で汚れた三神峯の体を丁寧に拭き取った。服を整えた頃にはさすがに消耗した体力の限界もあったのだろう、反応も鈍く、うとうととする三神峯を抱きしめて背中を撫でているといつのまにか彼は御堂に体を預けたまま眠ってしまっていた。 (細いなあ……、もともとの骨格も細いんだろうけど、俺が抱きしめたら折れそうだ)  胸に頬を擦り寄せる三神峯の髪に顔を埋めて、何度も抱きしめ直す。細い腰は御堂の両手で包めてしまいそうだし、腕は片手で掴んでも指が余ってしまうほど細い。肩幅だって、御堂の半分もいかないくらいなのではないだろうか。 「和樹、起こしちゃった……?」  ふと、それまで腕の中で微睡んでいた三神峯が申し訳なさそうに顔を上げた。自分が身じろいだことで御堂を起こしてしまったかと思ったのだろうか。三神峯が動くたび、柔らかい金糸のような髪がふわふわと御堂の鼻を擽る。 「ううん、大丈夫だよ。おはよう景」
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