ep.10 *

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「でもそのおかげで、和樹に会えた。噂とか社内チャットとかでしか知らなかった和樹が、初対面で違う部署にも関わらずまっすぐに俺と向き合ってくれた。それがどれだけ嬉しかったか。和樹に会えたから、和樹が俺を選んでくれたから、初めて体を大事にしようって思えたんだ」  だから、謝らないで。俺は和樹が思っている以上に救われているんだよ。  まさかそんなことを言われるとは思わなかった。あの時一番最初に惹かれたのは、彼の綺麗な顔立ちだった。それから知識や仕事の細やかさに惹かれた。彼と一緒に過ごせば過ごすほど、いつの間にか彼から目を離せなくなった。もしかしたらその時は、少しだけ同情も含まれていたかもしれない。  いや、違う。彼に惹かれたのは、展示会が最初ではない。  だからこそ、展示会から帰ってきてからは真っ先に自分を思い浮かべてくれたのが嬉しかった。心身ともに傷だらけの彼をどうにかして救いたいと思った。 「……ごめん」  ごめん、なんていう言葉が言いたいわけではない。本当はもっと違う言葉を選んで三神峯に伝えたいことがたくさんある。それなのに壊れたロボットのように、同じ言葉しか繰り返せなかった。 「和樹、大好きだよ。いつもありがとう」  それを知ってか知らずか、三神峯がぎゅう、と強く抱きついてそう言った。飴玉のような瞳を細めて笑う三神峯は今にも泣いてしまいそうだ。唇を重ねて、もう一度ソファに押し倒した。 「大丈夫、和樹と一緒にいるからかな。お腹も、どこも痛くない。だから、もう一回ちょうだい?」 「――……うん、俺も、もう一回したい」
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