ep.10 *

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「生まれつき免疫が正常に働かない病気なんだ。まあ、免疫不全って言った方が早いかな。そのせいかわからないけど、心臓も弱くて。本当は今こうして働けてるのが奇跡、なんだって」 「……うん」 「いつも飲んでる薬も、欠損した免疫の成分を補う薬に心臓の負荷を和らげる薬、発作が起きた時のための薬、肺の血管を広げる薬、薬の影響で貧血になりやすいから鉄剤とビタミン剤。最近は胃酸を抑える薬と粘膜を修復させる薬、それから痛み止め。そこに並べてある袋を見ればわかるだろうけど、年々増え続けて、気が付けば十種類を超えちゃった。完治まではいかなくとも軽快はすると信じてずっと治療を受けてきたのに、いつ死ぬかわからないんだよ。  ……俺は、和樹が思っている以上に迷惑をかけると思う。それでもいいの?」 「うん、いいよ」  その言葉に、迷いなどなかった。  肩がじわりと濡れる感覚がして三神峯の顔を覗き込めば、彼はガラス玉のような瞳からとめどなく涙をこぼしていた。ダウンライトの照明が涙を切なく照らす。  胸が痛むのはきっと、三神峯が御堂自身のことを考えて、言葉を必死に探して伝えてくれたからだ。御堂は三神峯の顔を両手で包むと、親指で涙を拭ってから視線を落として言葉を探した。 「俺ね、一年くらい前まで付き合ってた彼女が居たんだ。あ、もう完全に別れてるし、連絡はしてないから安心してね」 「……? そういえば、前に諏訪くんがそんなこと言ってたような……」 (あいつめ……)
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