ep.11

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 金剛沢と旗立に目配せをして、今回の企画の説明は三神峯だけで説明をすることにした。総務課長の言葉を聞いた金剛沢はかなり苛立っている様子で、旗立も厳しい顔をしていた。先ほどまで汗を拭っていたような彼には想像できないような。  スライド数枚ぶんの説明を聞いたあと、総務課長はため息を吐いてタブレットを片付け始めた。 「ふうん、あんまり見込みないね。費用のことを言うのは管理部だけど、君、こんな見込みのない研究に時間をかけるなら目の前の仕事を片付けた方がいいんじゃない?」 「……」 「研究課、人手不足なのか知らないけど研究に遅れを出し過ぎじゃない? そのせいで何回補正予算を出してるの? 少しはこっちの迷惑も考えてもらわないと……」 「それは……」 「時間の無駄だったな。君たちは裁量労働で自由にできるけど、こっちはそうもいかないんでね」  これ以上何を反論しても無駄だ。金剛沢も旗立もそう察したのか何も言おうとはしなかった。突き返されてしまった資料をまとめてミーティングルームを追い出される。腕時計が示す時間は、まだ10時を過ぎたばかりの時間だった。30分にも満たない時間で切り上げられて、次に繋がる成果が何も得られなかったことが悔しかった。 「お時間いただきすみませんでした。企画内容については練り直してきます」 「あの内容は練り直しても無駄だと思うけどね」 「……またお時間いただければと思います。どうかよろしくお願いします」
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