ep.11

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 胃液が沸騰しているような気がするほど胃が痛い。もっと食いつけばよかっただろうか。それとも、金剛沢や旗立が説明していれば何か違ったのだろうか。考えれば考えるほど、自分に嫌気が差すばかりだ。 (中田主任に何て説明しようかな……。周りに概要書のこと言ってたくらい自信あったみたいだし)  総務部のオフィスを出ると、旗立が三神峯の肩に手を置いた。 「三神峯くんの説明、わかりやすかったよ。正直三神峯くんが評価されていないのが不思議なくらいだ。もっとアピールすればいいのに」 「……ありがとうございます。またお時間いただくかもしれませんが、その時はよろしくお願いします」 「三神峯くんの頼みなら飛んでいくから」  彼はそれだけを言うとエレベーターホールに向かっていった。彼なりの慰めだったのか、最後は軽く肩をポンと触れただけだった。三神峯は小さくため息を吐いたあと、隣にいた金剛沢に頭を下げる。 「金剛沢さんも、ありがとうございました。すみません、せっかく早く来ていただいたのに……」 「いや、いい。気にすんな。旗立課長の言うとおり、説明に不足はなかったと俺は思うぞ。よく頑張った」 「……ありがとうございます。今回の件は上に報告したあと、またどういう切り口でリベンジするか考えて連絡しますね」 「三神峯……」  金剛沢が何か言いたげな表情を浮かべていたが、総務課長の言う通り目の前には手の付けられていない仕事が嫌というほどある。早々に戻って仕事を片付けなければならない。今日中に片付けなければならない研究はたしか三つあったはずだ。
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