ep.3

3/8

1490人が本棚に入れています
本棚に追加
/192ページ
「御堂さん、少し展示会見てきてもいいですか?」  三神峯から控えめにそう言われたのは、人の出が落ち着いた、まもなく終了の時間を迎える頃だった。  この展示会は医薬品だけでなく医療機器や研究機械の展示も行われている。今回三神峯は営業の補佐要因として同行してくれたが、三神峯の普段の業務からしても研究機械などには興味があるだろう。 「いいですよ、逆にすみません、ずっと僕たちが頼り切りで……。僕も一緒について行ってもいいですか?」 「もちろんです」  人の出は落ち着いているし、ブースには関西支社の営業部もいる。諏訪を一人残しても問題はないだろうと思い、三神峯と展示会場内をまわることにした。  あのあと、諏訪の来場者対応に同席しても結局御堂が主導になって説明をしてしまった。三神峯の補助もあって反応は上々だったが、あまり諏訪の勉強にはならなかったと御堂自身の反省も兼ねて。 (まつ毛長いな……。明美(※元カノ)より長いかも)  隣を歩く三神峯は、本当に綺麗な顔立ちをしている。色素の薄い髪と瞳、白く透明感のある肌。そのせいで、唇の傷が際立ってしまっている。男性特有の骨張った骨格ではないせいか、陽に溶けてしまいそうな髪と白い肌は違和感を感じなかった。彼から甘い香りがするのは香水なのか、それとも。 「御堂さん?」 「……あ、いえ。三神峯さんの髪の色、地毛なのかなって……」  三神峯は御堂の視線に気づいたのか、首を傾げた。まさか三神峯と前の彼女を見比べていました、なんて言えるはずもなく、口から出た言い訳はあまりにも幼稚な言葉だった。
/192ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1490人が本棚に入れています
本棚に追加