ep.11

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 痛む頭を振り切るように前髪をかき上げ、膝に頬杖をついて外を眺めた。秋の穏やかな空が眩しい。昔、病院の窓から見た空もそういえば秋の青空だった。あの時は未来の自分に対してどんな希望を抱いていただろう。 (分子標的の探索、新規化合物、バイオ医薬……。あとは細胞の培養ができるようになったからシャーレ上での変性をデータ化、あとはスクリーニングをして……。あ、それから新薬候補の報告書を書き直さないと)  風が強いのか、雲の流れが心なしか早い気がする。まるで時間ばかりが過ぎていって自分は取り残されている今の状況を表しているような、そんな気がした。早く戻らなければ。戻って報告して、次の仕事に取り掛からないければ。  震えたスマートフォンに表示された名前を見た三神峯は、深くため息を吐いて立ち上がると非常階段をあとにした。 ・・・To be continued.
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