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「? はい、母が外国籍なもので。母方の血を強く引いてしまったんです。男なのに変ですよね」
「あ、そうなんですね。いや、綺麗だし似合うなと思いまして」
(俺は一体何を言っているんだ)
同性に綺麗だと言われても嬉しくはないだろう。そう慌てて取り繕う前に、一瞬驚いた顔をした三神峯は柔らかく微笑んだ。その顔に、不覚にも胸が高鳴ってしまう。
「御堂さん、やっぱりかっこいいですね」
「えっ」
「薬研課の女性社員が御堂さんと仕事をするなんて羨ましいと昨日プレゼンをされたんです。でも今日一日一緒に仕事をして、彼女たちの言う通り背も高いし、仕事も出来るしかっこいいなって」
自慢ではないがこれまで御堂の容姿や仕事ぶりを褒める人はたくさんいた。だけど、こんなにも嬉しく思ってしまうのは何故だろう。
「……あの」
「あ、ここの研究機械、気になっていたんです。見てもいいですか?」
「あっ、はい」
これは彼のお世辞であり、同じ課の女性社員が話していたことを伝えてくれているだけだ、と御堂は自分に言い聞かせながら相手の話を聞く三神峯の横に立つ。
「いいなあ、この機械、ずっと導入したいと思っているんだけどなあ……」
「導入申請は出さないんですか?」
三神峯は相手と話しながら、小さくそう呟いた。昨今、社内では業務効率化を目的とした新システムの導入に前向きで、導入申請を出して承認が得られれば比較的すぐに導入することが可能だ。営業支援部でも何度かシステムを導入していることを聞いている。効率化になるのであれば、導入しないという選択肢は会社的にもあまりないだろう。
そう問えば、あきらめたようにため息をついた。
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