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「何度かは試みています。でも、そもそも主任の承認から得られなくて。この機械を導入するだけでもかなり効率化になるとは踏んでいるのですが、効率化は私の工夫次第でどうにでもなると言われてて……」
「それは……」
「すみません、戻りましょうか」
相手の話もそこそこに、三神峯は足早にその場を去った。戸惑ったように相手がパンフレットを渡そうか悩んでいたため、それだけを受け取って三神峯を追いかける。
「三神峯さん!
……三神峯さん」
やっと足を止めてくれたのは、ロビーに出てからだった。御堂は三神峯の腕を掴んで口を開く。
「チャットの返信が朝の3時とか4時とか、おかしいと思っていたんです。今日も朝から顔色悪かったですし。何か、辛いことでも」
「…………」
おかしいと思っていた、それは本当の話だ。事前に共有していた資料の返信時間が朝の3時だったり4時だったりといつどこで返信しているのかずっと疑問だったし、展示会前にぶつかったときも、白い顔がさらに青白かったのを御堂は見逃していなかった。
そして、自分からこぼしたくせにそれ以上聞かれたくないと言わんばかりの言動。幸か不幸か、なんとなく彼の所属する環境が悪いということを察してしまった。
こぼしたくせに、というのは言葉が悪いだろうか。あれは思わず漏れてしまった本音、だろう。
「……あったとしても、御堂さんには話せないですよ。普段なら関わらない部署ですし、迷惑はかけられませんから」
「迷惑だなんて思うはずないだろ!」
それでも頑なに拒む三神峯に思わず大きな声が出てしまう。三神峯が驚いた表情を浮かべた。
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