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「でも御堂主任だけは違って、僕なんかのためにロープレの時間取ってくれたり、営業に同行してくれたり。うまくいかなくて落ち込んでいると飲みに連れていってくれたり……。本当、感謝してもしきれないです。御堂主任、僕らの面倒も見つつ成績もずっとトップですからね」
「……優しいね、御堂さん」
「はい! そんな御堂主任の部下で僕は幸せ者ですよ!」
――迷惑だなんて思うはずないだろ!
声を荒らげた御堂のあの言葉は、きっと嘘ではない。
「三神峯さん?」
「あ、ごめんね。ちょっとぼーっとしてた」
御堂に守ってもらえる諏訪や、他の社員が羨ましい。仕事中、一番にそばにいられるのが羨ましい。東京に帰ってしまえば、三神峯は御堂とはほとんど顔を合わせなくなってしまう。それを考えるだけで、胸が締め付けられた。
(……御堂さんは、きっと仕事の仲間としか見てないから……)
落ち着かせるように背中を擦ってくれたこと、大丈夫と声をかけてくれたこと。
展示会中、疲れてないかずっと気にかけてくれたこと。全部全部、三神峯にとって嬉しかった。
「御堂さんって、彼女とかいるのかな」
「え、彼女ですか? いや、今はフリーだそうですよ。少なくとも、ここ1年はフリーなはずです」
つい声に出してしまっていたことにしまった、と口を押さえるが、慣れているのか諏訪は特に疑問に思う素振りも見せずにあっさりと答えてくれた。
整った容姿に、身長も高く面倒見もいい。彼を狙う女性がいないはずがないだろう。それでもフリーだという言葉に、胸を撫でおろす。
(なんで俺、今よかったって安心してるんだろう……)
三神峯は胸の奥で焦がれるような気持ちに首を傾げながら、展示ブースに戻った。
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