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オレンジ色の間接照明に照らされた薄暗く落ち着いた店内。控え目にかかっているジャズは、重厚感のある店内を引き立てている。客は御堂たち以外にはおらず、初老のバーテンダーにカウンター席を案内された。
「御堂さん、何にしますか?」
「僕はおすすめの赤ワインで」
「じゃあ僕はミモザで」
かしこまりました、と頭を下げてバーテンダーが作業に取り掛かる。何を話そうか悩んでいると、隣で店主が作ったであろう、カクテルの種類を詳しく書かれたメニューブックを眺める三神峯の指先が目に入った。白く細くなめらかな指先が、厚めのクラフト紙をなぞる。その手は、触れたらきっと見た目どおりなめらかなのだろう。
(……触りたい)
「……あの、御堂さん……?」
「あっ、すみません!?」
困惑したような三神峯の声に、御堂は我に返った。どうやら無意識のうちに三神峯の手に御堂自身の手を重ねていたようだ。慌てて手を放し、三神峯に謝る。三神峯はなぜ触れられたのかわからないという怪訝な表情を浮かべていたが、にこりと目を細めると首を横に振った。
「いえ、大丈夫です」
「お話し中失礼します。本日の赤ワインとミモザです。ごゆっくり」
「ありがとうございます。……それじゃ、とりあえず」
「はい。お疲れ様です」
タイミングよくバーテンダーから差し出されたグラスを手に取り、グラス同士をくっつけた。カツン、とグラス同士の小さな音が静かな店内に響く。グラスを傾けてカクテルを流し込む唇から目が離せない。抑えきれない自分の感情をかき消すように、御堂はグラスを煽った。
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