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「ん……おいしい」
「三神峯さんは甘いものがお好きなんですか?」
「そういうわけでは……いえ、そうなのかもしれません。研究で疲れるとつい甘いものを食べがちですね」
「ああ、わかります。僕もチョコレートとか机に忍ばせてますよ。外回りから帰ってきてから食べたり後輩にあげたりしてますね」
酔いが回るのが早いのか、先ほどまで何を話そうか悩んでいたことが嘘のように言葉が出てくる。他愛のない話をしているうちに、三神峯も酔いの影響なのか表情が崩れてだいぶ柔らかい表情になっていた。
三神峯の仕事の悩みでも聞き出そうかと思って二軒目に誘ったわけだが、この柔らかい表情が、仕事の話で曇ってしまうのはもったいない。そう思ってあえて触れないようにしていた。
(やばいかも……)
三神峯の紅潮している頬が、潤んだ瞳が、濡れた唇が気になって仕方がない。もうそろそろ、彼に惹かれていることを自覚した方が楽なのかもしれないと御堂は小さく頭を抱えた。本能的に触りたくなるほど、同性の、それも同僚に焦がれている。
「御堂さん……? 具合でも悪くなりました?」
黙ってしまった御堂を心配したのか、三神峯は心配そうに覗き込んできた。その頬に、思わず手を伸ばす。
「っ……御堂さん……?」
見た目の通り三神峯の肌はなめらかだった。滑らせる手に引っかかるものが何もない。
困惑した表情を浮かべる三神峯をよそに、御堂は親指で唇を撫でる。ぴくりと肩を震わせ、さらに顔を赤らめてこちらを上目で見つめてくる姿がたまらなく可愛く思う。
「……っ」
「……三神峯さん、好きです」
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