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『好きだよ、景』
耳元で囁かれた低い声。その声が頭の中で何度も再生され、濡れるはずのない下腹部がじわりと熱くなる。三神峯の自身は、確かにスーツのスラックスを持ち上げていた。
(嘘、そんな……)
信じられないと思いながらもスラックスを脱いで下着に手をかける。勃ち上がった自身が外気に触れてふるりと震え、すでに先端は先走りで濡れていた。恐る恐る自身に触れれば、待ってましたと言わんばかりに先走りがくぷりと溢れてくる。
「ん……っ」
せめて彼のマフラーを汚してしまわないようにと頭の中では思っていても、少しだけ、と本能が彼の匂いに縋り付きたくなる。
「あっ、ん、んん……!」
鈴口を右手で刺激しながら左手でマフラーを顔に押し付ける。くちくちと粘度の高い水音が静かな部屋にやけに響いた。仕事が忙しいという大きな理由はあったが、しばらく彼女はいなかったし、こうして自分自身を慰めるのは本当に久しぶりだ。
だから止まらないのだと自分に言い聞かせて、溢れ出る先走りを手に絡めて固く芯を持った竿を上下に擦る。
「ふっ、……ぅ、あっ」
(御堂さんだったら、どう触ってくれるんだろう……)
御堂に抱かれることを考えるだけで腰がゆるりと動いてしまう。耐え切れずいつの間にか両手で包み込むように、自身を慰めていた。
「あっ、やっ、出る、イく……!」
『イっていいよ、景』
「ひっ、あ、ああっ――!」
熱っぽい吐息交じりに、彼に耳元でそう囁かれたら。勝手に再生された彼の言葉と同時に、ぴゅくぴゅくと先端から精が吐き出された。
「は……っ」
三神峯は肩で息を整えながら余韻に浸る。彼を思って抜いてしまったのも申し訳ないが、なぜ自分が抱かれる側で想像してしまったのだろう。だんだんと冷静になる頭は、後悔しか出てこなかった。
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