ep.4.5 *

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(シャワーしよ……)  ベッドボードに置かれていたティッシュで精を拭き取り、ふらふらと立ち上がる。マフラーは汚れはしなかったが、念のため備え付けの消臭スプレーをかけてスーツと一緒にハンガーにかけておいた。 ≪もう寝ちゃった? 今日は……≫  シャワーをしようとワイシャツのボタンを外していると、テーブルに置いた私用のスマートフォンがメッセージの受信を知らせた。ロック画面には先ほど交換したばかりの御堂のプライベートのメッセージアカウントと途中までのメッセージ内容が表示されている。ロックを解除してメッセージ画面を開く。 ≪今日はありがとう。遅くまで付き合わせちゃってごめんね。お水ちゃんと飲むんだよ。明日は9時にロビー集合の予定でお願い≫ 「御堂さん……」  細かい御堂の気配りに胸が熱くなる。きっとこれまで御堂と付き合ってきた女性はもちろん、彼の部下もこんな風に大切にされてきているのだろう。どう返信しようか悩んだ末に、指を動かした。 ≪こちらこそ色々話を聞いてくれてありがとう。明日もよろしくお願いします≫  悩み抜いた末に打ち込めたのはたった二言のメッセージ。素っ気なくはないか、変なところはないかと普段は絶対に気にならないところまで気になってしまう。返信ひとつするのも悩んでしまう自分に恥ずかしさを感じながら、無料でもらったかわいらしいカワウソのスタンプを添えた。 (御堂さんは、きっとえっちも上手いんだろうな……)  思わず熱が集まりそうになるのを振り切るように頭を振り、スマートフォンをベッドに放り投げて三神峯はシャワールームに向かった。 (何考えてんだろう、俺は)  明日一日、彼を前にして平静を保てるだろうか、という悩みはお互い同じだった。
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