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≪こちらこそお疲れ様。最後まで居られなくてごめんね。ぜひコーヒーも連れてって≫
三神峯から返信が来たのは午前5時半を回った頃で、ちょうどいつもの癖で早くに目が覚めた御堂が日課であるジョギングに行こうとしていたタイミングだった。
≪おはよう。早いね。俺はこれからジョギングに行くよ≫
三神峯も同じように早くに目が覚めたのだろう、朝からメッセージのやりとりができることに心が浮足立つ。するとスマートフォンが突然震えだした。メッセージの通知ではなく、三神峯からの電話だった。はやる気持ちを抑えて、通話ボタンをタップする。
「おはよう、景。どうしたの?」
『あ……。おはよう。ごめんね、朝早くに』
浮かれた気持ちはすぐに冷静になった。電話越しの三神峯の声は、心なしか疲れているような声色だったからだ。
「いや、俺は起きてたからいいんだけど……。……景、眠れなかった? それとも、何かあった?」
そう問えば、三神峯は何かをためらうかのように息をこぼした。電話の向こうからは車が通る音と、ガラガラとスーツケースのようなものを引きずるような音がする。早朝でもスーツケースを引いている人はいるが、通行人が引いている音ではない。
てっきり家にいて起きたばかりなのだと思っていたが、彼は家の中にいるのではないのだろうか。
嫌な予感が、御堂の中に走った。
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