ep.6 *

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 そういえば頭を打ったかもしれない。徐々に鮮明になる記憶よりも、三神峯は御堂がこの場にいることに理解が追い付かなかった。  そんな三神峯に、御堂は優しい手つきで撫でながら問いかける。 「具合どう? 頭痛くない? ここ、腫れてる気がしたからさ」 「和樹、どうして……」 「……景が倒れたとき、救急車を呼ぶかあのまま景の家で寝かせるべきか悩んだんだけどね。反応はあったし、勝手に家に入るのも気が引けたから俺の家に連れてきたんだ。ごめんね、勝手なことをして」  そう言って彼は眉を下げて困ったように笑みを浮かべる。必死に頭の中で御堂の話を整理すると、つまり、ここは御堂の家で今寝ているのは御堂のベッドなのだろうか。そう方程式が成り立った途端、自分は御堂のベッドを占領していたことにようやく理解ができた。 「ご、ごめん、ベッド……!」 「気にしないで。大丈夫だから」  慌てて起き上がろうとすると、御堂が優しく押し返した。  御堂に大丈夫と言われてしまえば、もう三神峯は何も言えなくなってしまう。展示会の時から迷惑をかけてばかりだと視線を落とすと、それに気づいた御堂はベッドに頬杖をついて微笑んだ。御堂の片手は、まるで指通りの良さを楽しむかのようにまだ三神峯の髪を優しく梳いている。 「……じゃあ今度、一緒にカフェにでも行こうよ。クリームソーダが美味しいっていう行きたいカフェがあるんだよね。ね、それでおあいこ」 「……うん。ごめんね」 「そばにいるから、まだ寝てていいよ。疲れたでしょ」  優しい御堂の声に、目蓋が自然と落ちてくる。頭や左手の手当てのことや色々話したいことはあったが、安心しきった体を襲う睡魔には勝てそうにない。
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