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何となく納得していない三神峯の頭を撫でて御堂は寝室を出る。顔を洗って歯を磨いたあと、キッチンに向かった。
(昨日、最後まではできなかったけど今まででたぶん一番気持ちよかったな……)
三神峯の白い肌も、艶やかな嬌声も、目元が赤く染まり、涙で潤んだ色素の薄い瞳も。正直過去に体を重ねた中で一番体の相性は抜群だったと思う。白い肌に赤いキスマークがとにかく映えて、それが堪らなくそそられた。
蕩けたあの瞳に、自分だけを映してほしい。キスをたくさんしたせいで赤く熟れてしまった小さな唇で、自分の名前だけを呼んでほしい、自分からのキスだけをせがんでほしい。
冷蔵庫からミネラルウォーターのペットポトルを取り出しながら御堂はぐるぐるとそんな考えを巡らせていた。
(……やばい、シたい、かも。次は、最後までできるかな)
「うわ!」
足が濡れていく感覚を覚えて我に返れば、マグカップに注いでいたミネラルウォーターがあふれてキッチンカウンターが水浸しになっている。なぜここまで気が付かなかったのかと慌ててペットボトルを戻そうとしたところで運が悪く手が滑り、落とした弾みでマグカップまでもが床に叩きつけられてしまった。
「あー……最悪。床傷つけたかな」
「和樹、大きい音がしたけど大丈夫?」
物音を聞きつけた三神峯がキッチンを覗き込んだ。もしかしたら微睡んでいたかもしれないのに驚かせてしまったと、御堂は破片を集めようとしていた手を止めて三神峯を見上げた。
「ごめん、驚かせ――」
マグカップが割れて水浸しになっているのを見て、彼は途端に顔を青ざめさせた。慌てたように膝をつくと、破片に触れようとしていた御堂の手を強く掴んだ。
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