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「大丈夫!? 怪我してない!? 素手で触っちゃだめ!」
「――どうした? そんな慌てて」
「あっ……」
御堂の手を掴んだ三神峯の右手は、わずかに震えていた。驚いたように問いかけた御堂の言葉に我に返ったのか、ゆるゆると掴んでいた手の力を弱める。
「……ごめん、和樹の手に破片が刺さったらどうしようって思っちゃって」
(――……ああ、そうか)
そういえば彼は試験管を割ってしまったとき、バランスを崩して手に刺してしまったと言っていたことを思い出した。
昨日寝る前にも手当てをしたが、まだ痛みが完全に引いていないらしく拳を作ることが難しいらしい。昨日の行為中も左手は必死に指先で、時折爪を立てながら御堂の背に縋っていた。力を入れた拍子に傷口が開かないように何度かベッドに戻してはいたが。
もしかしたら彼は、自分のことを思い出したのかもしれない。
「……心配してくれてありがと。気を付けて掃除するから大丈夫だよ。それより驚かせてごめんね。ベッドに戻ってもいいけど、ソファーで待ってる?」
「……そ、そう……? じゃあ、ソファーにいるね」
「テレビ見てていいよ」
まだ顔を青ざめさせている三神峯を宥め、ソファーで待っているように促せば彼はぺたぺたとスリッパを引きずってソファーに座った。マグカップはもらいものの安物だったせいか、あまり細かくは割れなかったことが幸いだった。
しかるべき処理をしてからリビングに戻れば、三神峯がおずおずとソファーから顔を出して尋ねてくる。
「大丈夫……?」
「うん、もう大丈夫だよ。ごめんね、せっかく寝てたのにすっかり起こしちゃったね。先に顔洗ってくる?」
「うん、そうする」
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