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こくりと頷いた三神峯は、左手の包帯と顔の湿布を剥がした。露わになった痛々しい痣と傷につい目をそらしそうになったが、包帯と湿布を受け取りながら新しいタオルを渡す。
「顔洗ってきたら消毒して新しい湿布貼ろうか」
「消毒、まだ沁みるよね……」
青ざめた顔色を隠すように弱々しく笑った三神峯を洗面所へ向かわせて、御堂は寝室から湿布や包帯が入った救急箱を持ち出した。
気分が晴れるようにとつけたテレビからはがんに効果的な新しい飲み薬の承認が下りた、飲み薬としては国内初で、これでまた現代医療への期待が大きくなる、というニュースが流れていた。
(これ、うちの製品だよな。景も関わってる、んだよなあ……)
これで日本の寿命はまた延びますね、少子高齢化という観点から見るとどうなんでしょう、とコメンテーターの薄っぺらいコメントに、その裏でどれだけの人が苦労して飲み薬の形にまで開発しているのだ、と思いながら聞き流していると、三神峯がリビングのドアを開けた。
「和樹、タオルありがとう。洗濯機に入れておいたよ」
「ん、ありがと。……景、おいで」
そう手招きすれば、少しだけ顔を赤くして素直に三神峯は隣に座った。先ほどぐるぐると考えていたことと大きいサイズのスウェットの下から伸びる足がどうしても昨晩の様子を彷彿とさせて目に毒だと思ったが、今は手当てが先だと必死に自分に言い聞かせる。
目の前の三神峯はそんな御堂の煩悩など知らないため、不安げな表情でこちらを見つめていた。
「ごめんね、触るよ」
三神峯の髪をヘアクリップで留めて小さく切った湿布をあてがえば、痛かったのか反射的に目を閉じて肩を震わせた。
「っ……」
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