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「痛い? ごめんね」
「ううん、冷たくて驚いただけ」
「……目、閉じるのしんどそうだね。骨は折れてないと思うからせめて明日までには痣が薄くなればいいけど……。ここ、ぶつけたんじゃなくて中田主任に殴られたんだよね?」
わずかに赤いな、と思っていた頬は、昨日の昼過ぎからみるみるうちに赤紫色に変色し始め、しまいには一目でもわかるほど腫れあがってしまった。腫れ上がった時にこれはぶつけてしまったのだと彼は慌てたように言っていたが、東京駅から歩いているときにはたしかに『殴られた』と言っていたはずだ。
ぶつけてできるような痣ではないことを、御堂は見抜いていた。
「……えっ、と……」
「……景を疑ってるわけじゃないよ。心配してるだけ」
ばつが悪そうに俯いた三神峯に次、左手消毒するから手のひら見せて、と言えば素直に左手を差し出した。白い手のひらにはまだ完全に塞がりきっていない傷がくっきりと目立っている。
新しいガーゼに消毒液を含ませて触れると、消毒液がやはり傷口に沁みたのか反射的に御堂の手を振り払った。
「痛っ!」
「ごめん、痛かった?」
「ううん、ごめん、つい。沁みるのやっぱり慣れなくて」
「もう少し消毒したいから我慢できる? 俺の腕掴んでていいから」
そう宥めれば三神峯は再び左手を差し出す。右手はしばらくどうしようか悩んでいた様子だったが、控え目に御堂のスウェットの裾を指先で掴んだ。
(……もう少し甘えてきてもいいのに)
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