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慣れないのか恥ずかしいのか、まだ三神峯は積極的に御堂に触れてはこなかった。消毒の痛みだって擦り傷のような軽い怪我ではないのだから相当のものだろう、現に三神峯の手には汗が滲んでいる。
たとえこの痛みと同じくらい腕に力を込められて爪で傷つけられたっていい。そういった三神峯が負っている痛みもすべて御堂は受け止めたいと思っているのだが、なかなか三神峯は甘えようとしてくれない。「痛い」と、素直に話してくれない。
(まあ、出会って数日でもあるし、仕方ないか)
そう自己完結をして、巻いていた包帯をサージカルテープで留めた。相変わらず不格好に巻けてしまった包帯だったが、それでも彼は、嬉しそうに顔を綻ばせる。
「ありがとう。助かったよ」
「消毒もしてるし、たぶんガラスも残ってなさそうだから大丈夫だと思うけど、痛みが続いたり膿んできたりしたら病院に行ってね」
「ありがとう。もうそこまで痛くないから大丈夫だと思う」
(……嘘、手、震えてるじゃん)
体勢を変えて本棚にある本、読んでもいい? と続けた三神峯に生返事で返しながら、御堂はあまりにも怪我が多いのではないかと表情を曇らせた。いくら本人から三神峯自身の不注意だと言われても納得ができない。彼の様子からも、きっと悩んでいることはもっとたくさんあるような気がするが。
(これ以上問い詰める気はないけど……。なんとなく、無理してそうなんだよな……)
「わ……っ、和樹?」
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