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本棚を見るために背中を向けていた三神峯を、御堂は後ろから抱きしめた。状況がつかめない三神峯は首を傾げて腹部に回された腕に手を添えながら尋ねてくる。
「和樹、どうしたの?」
「んー、なんとなく抱きしめたくなっただけ」
理由なんてない。目の前の愛しい人が、いつか消えてしまうのではないかと思って思わず抱きしめただけだ。とくとくと感じる三神峯の鼓動と、御堂よりも幾ばくか高い体温。離したくない、そう強く思った。
「……和樹、そのままでいいから、聞いてくれる?」
しばらくされるがままになっていた三神峯がぽつりと呟いた。
「俺、主任から嫌われているみたい。怒られるのはいつものことだから慣れてるけど、金曜はちょっと、疲れてたからか言葉がキツく感じたんだよね。なんだか自信無くしちゃった」
「……景」
「自分ではタスクスケジュールを組んで、なるべくギリギリにならないように進めてるつもりなんだけど。報告書のやり直しとか方針転換とかあると予定が狂うし、さらに締め切りが一週間後なんていう案件を突然振られるから思うように進まなくて。やってもやっても終わりが見えないし、でもそれは俺の要領が悪いからで……」
責めるな、それ以上自分で自分を責めるな。彼の優秀さにも勤勉さにも、展示会を通して十分に伝わった。三神峯は十分頑張っている。きっと表立って出てこないだけで、彼の勤務態度や実績を評価している社員だって多くいるだろう。
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