ep.6 *

23/27

1491人が本棚に入れています
本棚に追加
/192ページ
 卵あったかな、と再びキッチンに向かうために離れてしまった御堂の温もりを名残惜しく思いながら、三神峯はソファーの上で膝を抱える。彼に気づかれないように、小さくため息を吐いた。 (……つい、和樹の前だと愚痴が出ちゃうなあ……)  御堂に触れれば触れるほど、我慢しなければならないと思う不安も不調もすべて、口からこぼれてしまいそうになる。  ――三神峯、ここ、まだ情報少ないんだけど? 俺が一度見てやったんだから一回で汲み取れよ。頭悪いな。  ――お前が書いた報告書、大事な案件だったから俺の名前で出しといたわ。何かあったときの責任はもちろんお前が取れよ。  ――お前みたいな役立たず、死んだって誰も何も思わねえんだろうな。かわいそ。 (……うるさい)  頭の中に響く中田の声に、目頭が熱くなって涙が溜まった。  いい歳をした大人が、男が、泣くなんて情けない。泣くくらいならそれだけ結果を出せばいいだけなのに。  治まっていたはずの胃の痛みが、再びズキズキと痛み出した。三神峯は目を閉じて、痛みと涙を押し殺す。 「景、朝ごはん食べたらさ、天気もいいし散歩にでも行かない? 俺の服貸すから……」 「……和樹」
/192ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1491人が本棚に入れています
本棚に追加