ep.6 *

26/27

1491人が本棚に入れています
本棚に追加
/192ページ
* * * 「……景」 「なあに?」  ガラガラとスーツケースを引きずる音に紛れそうな声で、御堂は三神峯の名前を呼んだ。  あれから御堂の家の近所を散歩したのはいいものの、散歩から帰ってきてからお互い我慢が出来ず、もう一度ベッドで体を重ねた。三神峯の体を気遣ってか御堂は最後まではすることはなく、お互いのものを擦り合わせるだけだった。それでも十分満たされたが、最後までしてほしいと思ってしまったのは少しだけ、内緒だ。 「今度、時間が取れたらどこかに行こうよ」 「昨日言ってたクリームソーダのお店?」 「そうそう、そこもね。景と一緒に行きたいところが結構あるよ」  すっかり綺麗に洗濯された下着やワイシャツ、皺にならないようにとハンガーにかけてあったスーツ。家に帰ったら食べるようにと、フルーツの缶詰も渡されてしまった。  御堂は甘えてほしいと何度も三神峯に言ったが、御堂が思っている以上に甘えさせてもらっている。今だって彼の家の最寄り駅まで送ってもらっているところだ。 「……ごめんね、本当は家まで送ればいいんだろうけど」 「そんなことないよ。ここまで送ってくれてありがとう」 「じゃあ、くれぐれも体に気を付けてね。左手、今日も消毒するんだよ」
/192ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1491人が本棚に入れています
本棚に追加