ep.1.5

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ep.1.5

『今日も東海道新幹線をご利用くださいまして、ありがとうございます。この電車は、のぞみ号、博多行きです……』  数時間前、東海道新幹線に乗り込んだ三神峯は深くため息をついた。  今回の出張を薬事開発研究部の部長から言い渡されたのはつい2週間前のことだった。営業部から言われたから行ってこい、ただそれだけだ。表面上は経験になるから、まだ若いから、とそれなりの理由を取り繕っているが、実際はただ単に面倒なことは三神峯に任せておけ、というお決まりのコースである。 ≪三神峯さん、今日からよろしくお願いします。先に現地に向かってます。≫ ≪こちらこそよろしくお願いします。≫  一時間前に受信していたチャットを見て、何も考えずに返信を打ち込む。営業一課の主任は優秀で若くして主任に昇格し、部下だけでなく上司からも信頼されていると聞いた。もちろん女性社員にも人気だとも。彼とはチャットでやりとりをするくらいだから、詳しいことはよくわからないが。
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