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御堂は駅の改札手前でスーツケースを引き渡し、包帯の巻かれた三神峯の左手を取って包帯の端を整える。わかってる、心配しすぎだよ、と三神峯は困ったように笑ったが、本当は彼を離したくなかった。
「また連絡するね、和樹」
「うん。無理だけはしないでね」
(……嫌な予感がするような気がするけど、考えすぎなのかな、俺)
改札を抜けてホームへと向かう三神峯の背中を見つめながら、これから先の不安が拭えないと御堂は静かにため息をつく。ホームに上がる手前で振り向いた三神峯は、御堂の姿を捉えると小さく手を振った。
「!」
(かわいいって思っちゃうくらい、景にハマりすぎてるんだよなあ……)
いや実際、景は美人だしかわいいとは思うけど、そう自分に突っ込みを入れて御堂は駅を出る。何か買い物でもして帰ろうかと思っていると、スマートフォンが震えた。
≪和樹、色々ありがとう。また今度お礼させてね≫
スマートフォンに入ったメッセージに、今度は安堵のため息がこぼれた。
彼の小さなSOSに、無理にでも踏み込んでよかったと思う。あの時、無理にでも会いに行かなかったら彼は今でも一人で痛みに耐えていたのだろうか。
自分は、心身ともにボロボロだった三神峯を、ひとりにさせるつもりだったのだろうか。
≪お礼なんていいよ。今度一緒に出掛けようね≫
それだけ返すと、御堂はアスファルトを蹴ったのだった。
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