ep.7

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ep.7

 展示会で功績を出した御堂は上層部からも一目を置かれ、御堂がいなければ営業部は回っていない、と言われるほど上司からも褒められた。  今回の展示会は自分だけではなく、同行してくれた薬事研究課や諏訪、関西支社の協力があってこその功績だと伝えれば、謙遜だと思われたのかますます過大評価をされて正直反応に困ってしまった。  自分の評価が嬉しくないわけではないが、三神峯は、ちゃんと評価されただろうか。それだけが気になっていた。 ≪今北海道に出張中。おみやげ、何がいい?≫  あれから2週間、御堂自身も出張が重なって何かと忙しかったが、ずっと気になるのは三神峯のことだった。あれ以降連絡をしても返事が返ってこないし、メッセージが既読にすらならない。  もちろん電話をかけても、出ることも折り返しがくることもなかった。おそらく仕事用のスマートフォンにチャットを送れば返ってくるのだろうけど、仕事としての用事もないのに送るわけにはいかない。彼の仕事の邪魔になってしまう。 (おみやげ……、先週金沢に行ったときも買ってきたけど渡せてないしな)  あの日、明け方まで仕事をしていたことや左手の傷、腫れていた左頬や側頭部。そして無意識にこぼれた涙。ずっと気になっていたが、彼が話したこと以上、深くは聞けなかった。話してくれたことは、きっと全体のほんの一部でしかないということに気づいていたのに。
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