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(この結果まとめたら新薬開発の成分分析、あとバイオ医薬の案件も進めておかないと……)
三神峯はこのあとのタスクを頭の中で整理しながらパソコンに向かっていた。展示会から帰ってきてからすぐに副リーダーを務めていた社員が辞めてしまい、今この研究課はますます人手が足りない状態だ。それに重なる新規の案件。積み重なった企画書は正直手がついていないものばかりである。
せめて他のメンバーに負担がかからないようにと、三神峯は仕事の振り方を以前よりも考えるようになった。
「三神峯くん、ちょっといい?」
「? はい」
ふと課長に呼ばれ、三神峯は席を立つ。神妙な面持ちの課長に少しだけ嫌な予感がした。仕事のミスなどで思い当たる節はないが、強いて考えられることとすれば研究が進んでいないことだろうか。
課長に連れられたのは会議室や打ち合わせスペースなどではなく、自動販売機が並ぶ談話ルームだった。テーブルに促されて座ると、課長はそのままカップ式の自動販売機の前に立つ。
「三神峯くんはコーヒーでいい?」
「そんな、申し訳ないです」
「いいから」
「……はい、大丈夫です。すみません、ありがとうございます」
言われるがままに紙コップに入ったコーヒーを受け取ると、課長は周りを見渡してから静かに話し出した。
「……三神峯くん、仕事、どう? 大丈夫?」
「は……?」
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