ep.7

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(……それって、和樹に、迷惑がかかっちゃう、よね……)  御堂に迷惑がかかることは絶対に避けたいし、優しい彼の迷惑になってはならない。自分といることで御堂が変な噂を立てられて居心地が悪くなってしまったら。そんなことを考えて反応をしなかったせいか、中田は興ざめをしたようで三神峯の胸元から手を離した。  その表情を見る限りかなりご立腹のようだ。彼が言うこと全てを受け入れないと、また先日のように暴力を受けるだろう。 「俺が知らないことがあると何か言われんのは俺なわけ。青山が辞めてから仕事分散させろって部長に言われるし。お前が遅くまで残ってるのはお前が勤務時間内に仕事を終わらせられない無能だからだろ。頼むからタスクスケジュールくらいちゃんとしてくれよ」 (勤務時間後に仕事を振ってくるのはどっちなんだか)  次の日の午前中までの仕事を勤務時間後の夜遅くに突然振ってくることもあるくせによく言ったものだ。優先事項が変わると、その分進めようと思っていた案件は後回しになってしまう。  それでもスケジュール管理が悪いと言われるのは三神峯自身だ。 「……そう、ですね。そうします。スケジュールに関しては僕も反省してます」  そもそも、報告書として最終的にまとめるのは主任である中田の仕事だ。本来であれば三神峯は実験の結果をまとめて中田に報告するだけだが、いつの間にか暗黙の了解のように報告書の作成まで押し付けられている。  係長である坪沼はそのことを知ったうえで加勢しているし、課長以上は気づいていないだろう。  中田は苛立った様子で自分の髪をかきあげると、手に持っていた紙コップを投げつけてきた。 「出来の悪い部下のくせに評価だけは高いんだよな。お前が女なら枕でもしてんじゃないのか疑ってるわ。まあ、たとえ枕してても”だろうな”って感じだけど」
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