ep.1.5

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(胃が痛い……)  スマートフォンが忙しなく震える。このバイブレーションの長さは電話だ。画面には直属の上司である主任の名前、「中田亮(なかだりょう)」と表示されている。 (これから新幹線だって伝えたんだけど……中田主任には関係ないか)  彼は仕事を他人に押し付ける天才と言っても過言ではなく、その割に都合のいいところはしっかり自分の手柄にする人だ。主任として薬事研究課に異動してきたのは今年度からで、そのおかげで薬事研究課の雰囲気は180度変わってしまった。今ではすっかり疲弊しきっている。ただでさえ人手不足が続いている部署であったにもかかわらず、せっかく今年度入社したばかりの後輩が早々に辞めてしまった。  キリキリと痛む胃を擦りながら、鞄からピルケースと水を取り出して胃薬を口に流し込む。何となく感じる吐き気をかみ殺すように三神峯は目を閉じた。  ちなみに、後から叱責される覚悟で中田には新幹線の中だから電話ではなくチャットでお願いしたいというチャットだけを残しておいた。
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