ep.7

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 このままでは慢性的な胃痛や寝不足が祟って本気で倒れかねない。昔から免疫不全という病気持ちで体が丈夫ではなかった三神峯は、今でも定期検査を受けては数値が悪いと主治医から釘を刺されていた。  特に今年に入ってからは数値が下がっていくばかりで、先月検査したときに主治医には頼むから入院して療養してくれと懇願されてしまうほどだった。  三神峯とて、自分の体を軽視しているわけではないが、毎月の定期検査で時間休をもらうのでやっとだ。なによりも自分が休んだことで青山のように他の社員へ負担が移ってしまうことを考えると、入院どころか1日休むことすらできない。 (俺がいなくても組織は回るって言うけど、そうじゃないんだよ……。まあ、今日は少し早く帰ろうか) 「三神峯さん! ここにいたんですか!」  お世辞とは言え課長に早く帰るように言われてしまったし、課が違う金剛沢にまで心配をされてしまった。今日くらいは早めに仕事を片付けて早く帰るようにしよう。そう思っていると、慌てた様子で飯田が談話ルームに駆けつけてきた。 「飯田さん、どうかしましたか?」 「坪沼係長が、来週までの新規化合物の案件まだかって怒ってて……」 「新規化合物の案件? そんな案件聞いてませんけど……」 「と、とにかく来てください!」  飯田の慌てぶりに嫌な予感がしながらも、三神峯は飯田の後をついてオフィスに向かった。
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