ep.7

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「三神峯、なんで新規化合物の案件進めてなかったんだよ!」  飯田に連れられるままオフィスに戻ると、すでにオフィス内は騒然としていた。見たところ部長や課長はおらず、坪沼と中田が神妙そうな面持ちで何か話している。三神峯に気づいた坪沼が苛立った様子で近寄り、胸倉を強く掴まれた。 「いえ、僕はその案件、聞いたことがないです。毎朝企画書の内容と締切をすべてチェックしていますが、そんな案件一度も……」 「でもお前の机から企画書が出てきたんだよ!」  手に持った企画書を乱暴に肩に叩きつけられたとき、やられた、と思った。坪沼の後ろでほくそ笑む中田が目に入った。クリップが外れた企画書がバラバラと音を立てて床に散らばる。  すみません、今すぐ対応します。そう言えばきっと、自分にすべて責任を押し付ける形になってこの場は収まるだろう。だが、三神峯はもう心身ともに限界だった。 「……っ、今日の朝もチェックしましたが、この企画書は見ていません。僕のタスクリストにも入っていませんよね?」 「俺はお前がいなかった日に飯田に渡したって覚えてるし、飯田だってお前に渡したって言ってんだよ。まだ言い逃れするつもりか?」 「――飯田さんが……」  ――ああ、そういうことか。  三神峯の中で何となくピースがはまった気がした。後ろに立っていた飯田に目をやると、彼は気まずそうに視線を逸らした。
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