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締め付けられるような胃痛を感じた三神峯は全てをあきらめて、床に散らばった企画書に目線を落とす。頭を下げて全て引き受ければ、きっと彼らは落ち着くはずだ。中田が言った虚言はどこまで嘘だと信じてもらえるかわからないが、言われてしまったものを撤回する気力すらない。
「――……申し訳ありませんでした。僕が……」
「それさ、進捗状況を確認してなかったアンタたちの方が悪いんじゃない?」
三神峯の謝罪に被せるように発せられた重苦しい雰囲気を切り裂くような声は、聞き覚えのある声だった。
「は?」
坪沼と中田が間の抜けた声を漏らしたのを聞いて、三神峯は後ろを振り向く。
――御堂だ。
「……御堂さん」
「いや、普通に考えてそうでしょ。なんで一人に責任押し付けようとしてるの? 逆の場合どうなのよ。まあ、そう言ったら報告がなかったからとか、言われなきゃわからないとか言うんだろうけど。なんであくまでも自分たちは悪くない姿勢なわけ?」
「営業部が何の用だよ、お前は関係ないだろ」
御堂の低い声は、たしかに怒りを含んでいた。彼の言葉に挑発された中田も声を落とすものだから、オフィスは静まり返ってしまう。誰もが気まずそうな表情をしていた。
御堂は冷え固まったオフィスの雰囲気を気にすることなく長い脚でフロアを蹴ると、先ほどとは打って変わり、中田の言葉におどけたように笑って手に持っていた紙袋を掲げてみせた。
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