新しいお母さん?

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新しいお母さん?

高校1年生も終わりに近づいた3月。 風がやんわり温かくなってソメイヨシノの蕾もピンク色に膨らんできた時期。 高1生の3月は、テストや行事もない、いわばレームダック(無駄な任期)である。正直言って学校はダルい。早く春休みになって自由を謳歌したい日々だった。 「直也くん! 今日の放課後、暇?」同じクラスの池上紗季が声をかけてきた。 「暇って・・・。まあ暇だけど」なんだか僕は暇人に見られているようで悔しいが。 「あのね、3組の私の友達が、直也くんにデッサン描いてほしいって頼まれたの」 「また?」 「だって直也くんが書く似顔絵のデッサン、みんなから大好評なんだよ、ついでに直也くんの自画像も欲しいって」 (はあ・・またか・・・) 僕は小さいときから父から教わった絵描きの才能で、クラスのみんなに羨ましがれている。 10分もあれば、人の顔なんて簡単にデッサンできるし可愛くデフォルメしたイラストも描けるのだ。 クラスでは僕の書いた似顔絵をSNSのプロフィールにアップする子も多い。 「直也くんの顔もかっこいいから、自画像もほしいんだって、直也君モテる! きゃー」 「勘弁してよ」 といいながら満更でもない。はっきり言って僕はモテ期なのかもしれない。 ここ1年、五本の指以上は告白されている。学年で一番の可愛いと言われる子にも告白された。 でも駄目なんだ。僕は愛を告白されると、いつも僕は冷めてしまうのだ。要は愛されるよりタイプ。 中学2年の時、初恋の先輩に一目惚れして、未だに未練が捨てきれない。片思い症候群なんて言葉があるのかわからないが、周りからは『ソッチの気』があるのでは? と噂されているのも歯痒い。 放課後になった。 隣の席の今井純也が言った。 「じゃあな、直也! 帰宅部はいいな」 純也はサッカー部。詰め襟の制服のボタンを緩め、格好は部活モードになっている。 「帰宅部って言うなよー、家に帰ったら家事や料理で大変なんだ」僕は言った。 「しっかし、お前、もったいないよな、俺より身長3センチ高い183だろ? スポーツでもやれば、今よりもっとモテちゃうんじゃね?」 僕の心に棘が刺さる。純也は僕の過去を知らない。本当は僕だってサッカーがしたいのだ。
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