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オムライス
制服にフリルの付いた白いエプロンをしてキッチンに立つお母さん・美由。僕はドキドキした。
危なっかしい手付きで玉ねぎの皮を包丁で剥いている。
「お母さん、俺、代わろうか?」
「ノンノン! 大丈夫。家ではいつも成功しているから」
「なにか手伝おうか」
「そっか、直也も料理しているんだよおね、料理男子はモテるよ。そのルックスもいいし。彼女いるの?」
「い、いない」
「そっか。もったいないね、直也みたいなルックスなら彼女さんいるかと思った、もしかしてボーイズラブかな?」
「ち、違うよ! ほら危ない。包丁で手を切るよ」
「大丈夫ったら大丈夫!」
「意地っ張りだな、お母さん!」
「お! 2人で共同作業か、親子で楽しそうだな」父さんが2階から降りてきて僕らをからかった。
「龍之介さん、お酒はビール? 缶のハイボール?」
「ハイボールにしようかな」
「はーい。直也、龍之介さんに買ってきたかまぼこ切ってあげて」そう言って美由は冷蔵庫から缶チューハイを取り出して、父さんに渡した。
「ハハハ、美由はカワイイな、これは酎ハイだよ。ハイボールお願い」
「あら、美由、間違えちゃった」美由の照れ笑い。
「自分のこと美由っていうんだ」僕は突っ込みをいれた。
「そうね、もうお母さんだから、美由っていっちゃ駄目ね」美由は自分で頭に軽いげんこつ。
僕はフフッと笑ってかまぼこを切る。
大葉の葉を載せた小皿にかまぼこを載せてそれだけ。
「すごい! 直也、上手ね さすがセンスある!」
「はあ? 切っただけだけど」
「でもこの葉っぱとかさ、かまぼこに切れ込みを入れたりさ」美由は目を丸くした。
「あ、ありがと。こんなんで褒められるんだ」
「直也、見直したわ。お母さん、惚れちゃう」
「!!!」僕は心臓を撃ち抜かれた。惚れるだなんて言われ僕は顔を赤くした。
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