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「お待たせー!」
ダイニングテーブルに完成品はやってきた。
キッチンは少し白い煙が充満していたからちょっと心配だったんだ。
美由の作ったオムライス。
ケチャップライスの上に半分黒く焦げた卵が覆いかぶさっていた。
「・・・」僕は固まった。お好み焼きのような・・・。
「美由、上手じゃないか」(えー!父さんってば・・・)
「そう? 龍之介さんにそう言ってもらえると美由、嬉しい!」
「さあ食べよう」
「待って! 2人にはあたしがケチャップをかけまーす」
そう言って美由は父さんのオムライスにはハート形。
僕にはスマイルマーク。片方の目尻のあたりで涙が滲んで見えるようなケチャップ。
僕の心の中を見透かしたような美由のペインティング。
「あ!乾杯ね」美由は言った。
父さんはすでに赤ワインを飲んでいる。僕と美由はアップルサイダーだ。
グラスを傾け、「かんぱーい!!」
「いただきまーす!」
ちょっと塩辛い。ケチャップライスは味が濃い。
「上手いな!」父さんの一声。
「よかったー。美味しくないって言われたらあたし、泣いちゃったかも」
「美由が作ったんだ。美味しくないわけがないだろ」父さんはほろ酔いで、またおのろけなことを言う。
「直也、どう?」
「う、うん。じょ、上出来じゃないかな」
僕が美由を泣かせるわけにはいかないだろう・・・。
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