Love Me お母さん

これって恋？！

僕は食事が終わって一階の寝室に戻った。
ベッドにダイブして大の字になった。
なんだかとっても長い１日だった。

風呂はいつも父さんが先なのに、美由が先だなんて父さんも甘い。

（あ、俺って嫉妬している？）

風呂場から香ってくる普段とは違う石けんの香り。
なんとも言えない柑橘系のいい香り。
美由が風呂に入っていることを想像する。

（ダメだ！　僕にとってはお母さんだ！）僕の胸は締め付けられるようにドキドキした。

この感覚はなんだろう？　中２のとき恋をした佐藤奈々子先輩を思う気持ちと同じ気がする。
僕は美由に恋をした！？
（イケナイ！　イケナイ！）僕はせっかくワックスで仕上げた髪の毛をくしゃくしゃに掻きむしった。

胸の中がギューっと鷲掴みにされている感じ。
（そうだ、これは恋だ。俺は美由を好きになってしまった！）
好きな人とこれから毎日一緒に暮らしていける、そんな嬉しさも、急に怒りへと変わった。

美由の愛する男は、父・龍之介だ。父さんも美由に首ったけ。
そうだ！　父さんは僕の愛するお母さん・美由を奪ったのだ。

（こういうの、なんだっけ？　たしかエディプスコンプレックスっていったっけ？）たしかに男児が母親を自分のものにしようとして、父親に敵意を感じる、そんな感情だった。

でも違うよな、と自分にいい聞かせた。だって美由は本当の母親ではないし。
本当なら、父さんがいいお母さんを見つけて幸せになってくれればと祝うべきなんだろうな。

アンビバレント・・・。相反する感情や想いを同時に心に抱いてしまうこと、まさにそうだ。

なんでこんなことになったのか、僕は頭の中は嬉しい、好きだ、怒り・・・で混乱しているのだった。