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しばらくしてドアがノックされた。美由の声だ。
「直也! お風呂どうぞって龍之介さんが」
「う、うん! わかった」ドア越しに叫ぶ。
「それから明日の朝食なんだけど・・・ご飯がいい? パン食派?」
「うーん だいたいパンだね、ウチは」
「そっか、じゃお母さん 目玉焼きとベーコンくらいは焼くね」
「あ、そう? ありがとう」
「何時に起きるの?」
「うーん7時かな」
「わかった、お母さん、寝るね」
(ガーン!)頭が痛くなった。今から父さんと寝るということか?
これはいわゆる『初夜』ってやつなのか? 僕は胸が張り裂けそうになった。
「お母さん!」
「何?」
「あ、やっぱ・・・なんでもない」
「おやすみー」と美由。
「おやすみ!」僕はベッドから跳ね起きた。
風呂に入ると美由のシャンプーの残り香が鼻をくすぐった。
いつまでも嗅いでいたくなるような甘い香り。
今頃、美由は2階の寝室で髪を乾かしているのかな、歯磨きかな、などいろんな想像をする。
その晩は地獄だった。
眠れやしない。
机からワイヤレスのイヤホンを取り出して、思いっきり音量を上げて音楽を聴いた。
ますます目が冴える。うるさくて眠れない。
イヤホンを外した。
天井が1回、軋んだような音がした。
堪えられない。僕はスマホのゲームを半分、うわの空でやって夜明けを待つのだった。
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