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「寺嶋さん!」僕はこれまた教室の片隅に陣取る女子の中に寺嶋佑美を見つけた。
「あ! 直也くん おはよう」佑美は言った。
「おはよう。っていう場合じゃなくて、昨日見たこと、話してくれない?」
「キャハハ 直也くん、彼女さんと歩いてた? あたしたち昨日部活の帰りに見ちゃったの」
「それ誤解! マジやめてくんないかな そういう噂」
「え? 違うの? 手を繋いでいるように見えたけど?」
「それも違う! 手を繋いでたのは俺じゃない」
「じゃ、誰よ?」
「そ、それは・・・とにかく寺嶋さんたちが見たのは俺の彼女じゃないから!」
「じゃあ、誰なのよ?」
「親戚だよ、親戚。家に来るって言うから駅から家まで案内していたんだ」
「ホントに?」
「ホントのホント! 頼むから炎上させないで」
「なーんだ。違うんだ。つまんなーい。可愛い彼女さんだと思ったのに」佑美は残念そうな声をした。
「勘弁してよ」
「でも安心した。学年でも直也くんのこと、狙っている女子も多いからみんな安心するんじゃない」
「うん。安心して」
「え?なにそのリアクション。直也くんって好きな女子いるの?」
(はい、中2のときから好きだった佐藤奈々子先輩だよ、なんて言えない。いや、昨日運命的に出会ったお母さん・美由だよ、なんて口が裂けても言えない!)
「ノーコメントで」
「なんか怪しい。直也くん、女の子に興味なさそう」
「いや、べつに。ノーマルだから。今は好きな子もいないんだ。じゃあね! 火消し頼むぜ!」
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