友の帰省

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友の帰省

「この景色もちっとも変わんねえな」  そう言って窓の外に目をやるのは俺の昔馴染み。初恋の相手でもあり、小学校の時から現在まで絶賛片思い継続中だ。  彼は昔から勉強もできて運動神経も抜群。所謂「クラス一の人気者」と呼ばれるような人物だった。俺はそんな彼とずっと一緒にいたいがために猛勉強をし、なんとか同じ高校にまで進学した。その後は一流の大学に進学をし地元を離れてしまった彼に俺がついていけるはずもなく、離れたまま今に至る。  でも恋心はそのままに、こうしてたまに帰省する彼と会うのを楽しみにしていた。  全く人のいないこの片田舎の電車の中、車両には俺と彼の二人きりでまるで貸切状態だった。  一年ぶりに再会した幼馴染がこの地に帰省したのにはワケがあった。大体一年に一度の周期でやってくる。ずっと片思いをしている俺から見たら今回もその理由の見当はついていた。 「で? 今回はどうしたの?」  確認の意も込め俺がそう声をかけると、ちょっとわざとらしくシュンとした表情を見せる。ほらやっぱり……どうせきっと、また同じこと。 「フラれちゃった……」 「そっか、見る目ねえなそいつ。気にすんなよ。俺はお前が大好きだよ」  そう言ってやると「ふふ」と言って笑顔になる。シュンとした顔も好きだけど、こうやって俺の前でだけ見せる安心したような柔らかな笑顔も俺は好きだ。  俺の発する「大好き」という言葉はどういう風に伝わっているのだろう。どうせ冗談とか軽い気持ちに思われているのだろうけど、俺は毎回本気で言っている。伝わらないとわかっているから口に出すことができるのだ。  そう、伝わらなくていいんだ。  俺もたちは同じ「男」なのだから──
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