ツー・ショット

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完全に疑心暗鬼になっているあたしに「信じてください!」と珍しく相沢君が声を張り上げた。太めの眉はグっと八の字になり、相沢君は懇願するように訴え続ける。 「僕、僕、僕は、Lastoneのファンなんです。黒瀬さんを心の底から尊敬しているし、楽曲全てを愛してます。もちろん他のメンバーさんのことも大好きです。彼らは、Lastoneは、僕の心の支えなんです。神なんです。そんな人からのお願いを裏切ることは切腹するようなものなんです」 「は……?」 「それにこの事を誰かに言ったら黒瀬さんの立場が危うくなります。黒瀬さんを傷付けることだけは決してしません。僕は黒瀬さんに幸せでいてほしいんです。黒瀬さんが幸せなことが僕の幸せなんです。だから絶っっっっ対に公言しません。墓場まで持っていきます」 「……」 「信じてください。本郷さん。いえ、黒瀬さんからもなかを直接貰える世界一幸せな本郷さん」 「その呼び方やめようか?」 相沢君からこれほど強い圧を感じたのは初めてだ。あたしを壁際まで追いつめて愛と覚悟を熱く語った相沢君の肩を優しく叩く。 ふんふん、と鼻息を荒くしている相沢君は顔まで赤くなっていた。彼のLastoneへの熱は並大抵のものではないようだ。 「分かった。分かったよ。相沢君のこと信じる。だからちょっと落ち着いて」 「落ち着いてます。こんなに喋ったのは初めてLastoneのライブに行った感想を居酒屋で何時間も語り明かした日以来かもしれません」 「……意外と饒舌なんだね」 相沢君の新たな一面を見ることができた。 とりあえずこの件が広まることはない。けれど、他の人がいる場所でも、堂々と大胆な行動を起こす黒瀬克をどうにかしておとなしくさせなければ、悩みが尽きることはない。 「……」 高級もなかに書かれた電話番号。 これを利用して、あたしは一度きちんと黒瀬克と話をした方がいいのかもしれない。
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