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此処数日の間にやって来た銀への依頼は全て、いなくなった人を探してほしいといったものだった。その数は日を追うごとに増えていく反面、いなくなった人物は一向に見つかる気配がない。
探そうにも、全く手掛かりが得られなかった。まるで、存在自体が忽然と消えてしまったかのように……。
銀は、全力を尽くします、とは言ったものの、頭を抱えたくなって少し俯いた。これまで何度そう言って、どれだけの人の期待を裏切ってしまったのだろう。そんな事を考えると、胸が苦しくなる。
「見つけて頂けるんですか……?」
青年の不安そうな声が、銀の苦しみを加速させる。だが、ここで突き放す訳にもいかない。
「……何か、手掛かりがあれば、良いんですが」
絞り出すように放った言葉だったが、期待出来ない事であった。これまでも依頼人に同じ質問をしてきたが、誰からも有益な情報が得られなかったのである。
すると、青年が、あっ、と声を漏らした。
「実は……彼女が消える前に、一度、知らない男の人が訪ねて来たんです」
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