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 少しすると救急車の音が聞こえてきて、だんだん音が大きくなって駄菓子屋の前に止まって静かになった。  お兄さんが駆け足でお店の外へ向かうと、水色の服を着た二人が担架を持ってお店の中に入って来た。  ぼくが邪魔にならないように脇の通路によけると、水色の服の人たちがおばあちゃんを担架の上に乗せて外へ向かって歩き出した。  ぼくもお兄さんの後をついてお店の外に出ると、お店の前に人だかりが出来ていた。  おばあちゃんは担架に乗せられたまま救急車の中に運び込まれた。それを見ているとお兄さんがぼくの方を振り返った。 「お家の人の連絡先はわかるかな?」  ぼくはランドセルからママの連絡先が書いてある紙を取り出しお兄さんに渡した。お兄さんはその紙を救急車の前で待っていた人に見せた。 「すいません、この子の親御さんの連絡先です。おばあちゃんのことと、この子がここにいる事を伝えてもらえますか」 「わかりました」  そう言って救急車の前で待っていた人はママの連絡先をメモ帳に書き写した。そして、救急車の後のドアが下がって閉まると、車の運転席の方へ早足で歩いていった。  すぐに救急車の赤いランプが回転し、音が鳴り出すと道路を走り出した。救急車が小さくなるのと一緒に音も小さくなっていって、そのうち救急車は見えなくなった。 「じゃあ、君はお家の人が来るまでここで待ってるんだよ」 「うん」 「じゃあ」 「どうもありがとうございました」  ぼくが言うとお兄さんはにこりと笑って右の方へ走っていった。頭を撫でられた時といい、お兄さんの笑顔を見た時といい、ぼくはなんだか元気をもらえたような気がして、不思議なお兄さんだなと思った。  しばらく、ぼんやりと走っていくお兄さんの後姿を見た後、お店の中へ戻った。
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