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 車のままの隣の席に乗り込むと、車が発進して背中がググッと椅子に押し付けられた。  車の、右に曲がって下さい、という声にしたがいながらママが町内の細い道路を運転し、ちょっとすると大きな道路に出た。  ママの隣をたくさんの車がびゅんびゅんと通り過ぎていった。  車に乗ってから30分くらいすると、おばあちゃんが運ばれたらしき病院が見えてきて、ママもその病院の駐車場に車を止めた。 「行くよ」  ママはいつもと違って真剣そうに言ってドアを開けて外に出た。ぼくもシートベルトをがちゃがちゃやってドアをあけて外へ出た。  車が、ピピッと鳴った。ママが歩き出したのでぼくもママについていった。いつもより歩くのがはやい気がするので、ついていくのが大変だ。  ママが歩くと地面がコツコツと鳴る。しばらく歩くと、大きな白い病院の明るい入り口が見えてきた。  入口に着いて大きな自動ドアをくぐって中へ入り、ママについて左の方のカウンターの所で立ち止まった。 「あの、ヨシオカカズエの娘ですが」 「あ、ヨシオカさんの、お部屋は……3150ですね、そちらのエレベーターで三階へおあがり下さい」 「ありがとうございます」  ママは受付けのお姉さんにそう言うと、右の方にあるエレベーターへ向かって歩き出したのでついて行った。  エレベーターに入ると、ママは3のボタンを押したあと閉じるを押した。おなかの中がググーッと持ち上がったあと止まった。  ママについてエレベーターを降りて左へ曲がってちょっとするとママが立ち止まった。  どうやらおばあちゃんはこの中にいるらしい。ドアの上をみてみると150と書かれている、間違いない。  ママは黙ってドアノブを捻ってドアを開け、中に入った。ぼくも後ろに続いた。
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