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「なにやってるのよ……?」 「いや、うるさいから止まらないかなと思って」 「あ、ごめん、ごめん、テレビの音きこえなかったね。ごめんね」  ママがニコニコしてぼくに言ったので、ぼくはリモコンを持っていた手を下ろしてテーブルの上に置いた。 ママはぼくにとってとても重要なお話をしていた事に気づいていないらしい。 ケーキ屋のお姉さんのことを好きなのがママにバレるのは恥ずかしいので普通に聞かなければならない。 「駅前のケーキ屋のお姉さん結婚するの?」 「ヤダ、聞いてたの」 「うん」 「結婚するみたい」 「誰と?」 「そこまではわからない」  そこが一番重なのに、いったいどんな話で盛り上がっていたのかものすごく気になり、同時に怒りたくなってきた。  そういえば、たしかケーヤク結婚と言っていた、ケーヤク結婚というものは普通の結婚とは違うのだろうかと、それも気になってきた。 「ケーヤク結婚ってなに?」 「えっ」  ママの表情が変わった。どうやら聞かれたくなかったことらしい。おそらくさっきの話の中で大事な事なのだろう。  ママがパパに大事な事を聞かれて困った時にする顔だ、間違いない。  パパが警察官なので、パパの子供であるぼくもそういうことに気づく力がみんなよりすごいのである。 「ねぇ、ケーヤク結婚ってなに?」  答えてもらえない時は、もう一度同じ事を聞くと良いのだ。ママが見ていたテレビで見た事がある。 そのとき相手の顔をじっと見つめるのが大事だ。
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