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「えっ……」  お姉さんが顔を上げておばあちゃんの方を見た。 「そうでしたか……?」  おばあちゃんは何を急に言い出すのだろうと思った。 「う~ん、だれか男の人と一緒に……どこであったのかのぉ……はてぇ……?」  おばあちゃんはまだお姉さんの顔をじっくりと見つめており、何かを思い出そうとしているようだ。  ぼくがお姉さんの顔を見上げると、お姉さんの目がちょっと大きくなった。 「ひ、人違いじゃないでしょうか、すいません、あまり心当たりが無いもので」  急にお姉さんの口調が変わった。そして黙り込んでうつむいてしまった。 「おばあちゃんたら! 困ってるじゃないの、どうして女の人がいると、すぐ男がぁとか言うのよぉ」 「違うよ~、そういうことじゃなくて、どことなくこの子の面影がだねぇ、わたしの記憶に……」 「もう、やめなさいって! ごめんなさいね、それみっつ頂けるかしら?」 「……かしこまりました」  お姉さんは腰をかがめてショーケースの中のケーキを取り出し、白い紙の箱に入れたあと白いビニール袋に入れた。 「2480円でございます」 「カードで」 「かしこまりました」  お姉さんがママからカードを受け取ってなにやら操作をしたあとママに返した。 「ほら、受け取りなさいよ」  ぼくは背伸びして自分の身長と同じくらいのショーケースからあたまと両手を出した。 「ありがとうございます」  ケーキを差し出したお姉さんの顔に、ぼくの頭の中にあるいつもの笑顔は無かった。 ぼくはお姉さんの顔をじっと見てしまった。なんだか元気がなさそうだ。 「ほら、いくわよ。どうも~」  ママがぼくの肩を軽く叩いたので振り返った。 「ねぇ、ホントにどっかで会ったことないかえ?」 「おばあちゃん! 行くわよ!」  ママがおばあちゃんを呼ぶと、おばあちゃんもしぶしぶぼくの後をついてきた。  ぼく達は車に乗っておばあちゃん家である駄菓子屋さんへ向かった。  ぼくはケーキの箱を抱えながら、ぼくにもあのお兄さんの様に人を元気にする不思議なパワーがあればなぁ、と思った。
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