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21
車に乗ってしばらくするとおばあちゃんの駄菓子屋につき、ぼく達は車から駄菓子屋の前に降りた。
「なんだいこりゃあ、とびらをセロテープで止めて」
「鍵が見つからなかったの」
「あいかわらずマサコは適当やねぇ~」
「大丈夫よ、取られるものなんてないでしょ?」
「まぁ、そらそうだわ、ふひっ、ふひっ」
おばあちゃんはセロテープと休業中の紙をべりっとはがすと扉を左右に開き、中に入って行ったのでぼくとママも後をついていき畳の上へ上がった。
「いやぁ~、帰ってきたなぁ、どっこいしょー」
おばあちゃんはそう言って、畳の上の座布団に腰を下ろした。
「おかあさん、わたし、夕ご飯作るからゆっくりしてて」
ママは立ったまま言い、ぼくはテーブルを挟んでおばあちゃんの前に座った。
「おっ、気ぃきくじゃない、でも、ユースケさんのごはんはどうするんだい?」
「おばあちゃんが倒れたって連絡したから、適当に食べてくると思うわ」
「そっかぁ、ユースケさんには迷惑かけたなぁ」
「大丈夫よ、気にしなくていいわ」
「そうかえ、じゃあごちそうになるかのぉ、冷蔵庫の中のもの適当につかってやぁ」
「うん」
ママはそういって奥の台所の方へ行った。
「ケン坊、茶ぁ飲むぅ?」
「うん」
おばあちゃんが振り返ってコポコポコポと音がしたあと、お茶の入った湯飲みが二つテーブルの上に置かれた。
おばちゃんはズズー、ズズーとすすった。ぼくもおばあちゃんのまねをしてズズー、ズズーとすすった。
先ほどのおねえさんの寂しそうな顔が思い浮かび、胸が締め付けられる思いがした。
「どうしたん? 元気ないやないかぁ」
お姉さんの事を言うべきかどうか迷った。またママといっしょにからかってくるかもしれないからだ。
でも、ぼくは悲しそうなお姉さんをどうにかしてあげたいと思った。
「ケーキ屋のお姉さん元気なかった。やっぱりケーヤクのせいかな?」
「ズズー、ズズー、うぅ~む、どうじゃろうなぁ、だが確かに元気はなかったのぉ、ズズー、ズズー」
「ぼく、やっぱりお姉さんを助けてあげたい。ズズー。ケーヤクがなくなれば元気になるかなぁ?」
「ズズー、ズズー。どうじゃろうなぁ、まずは契約の内容を確かめないとのぉ、ズズー、ズズー。元気がないところを見ると、やっぱりあんまり良くない契約なのかもなぁ、ズズー、ズズー」
「どうやったらケーヤクのなかみわかるかなぁ、ズズー、お姉さんに聞けばわかるぅ? ズズー」
「ズズー。そら、あかんよぉ、契約って言うのは普通人に見せんがな、ズズー。それにお姉さんだって、知られたくないだろうにぃ、ズズー」
「そっかー。ズズー、ズズー」
お姉さんの他にケーヤク内容を知ってる人は誰がいるのだろう? 考えてみたが見当もつかなかった。
とりあえず、明日クラスのみんなに、ケーキ屋のお姉さんのケーヤクを知っているか聞いてみようかと思った。
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