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「あっ、今日は巨人戦や」
おばあちゃんがテレビの電源を入れると、カーンとボールを打つ気持ちイイ音が聞こえてきた。
「おおっ!」
おばあちゃんはテレビの方へ身を乗り出した。あまりに真剣に見ているものだから、野球はわからないが、ぼくもなんとなくテレビを眺めた。
しばらくするとママがごはんを持ってきた。白いごはんと焼肉にキャベツの千切りが添えてあった。
ぼく達はいただきますをしてごはんをぱくぱく食べ始めた。
「おおっ! やった! ふひっ! ふひっ!」
「おかあさん、あいかわらず野球好きねぇ、関西生まれなのにずっと巨人ファンなのぉ?」
「シンジョーが引退するまでは阪神やったよ、今は巨人のサカモトよ、おほっ! それに生まれは関西やけど、おまえが生まれるまではいろんなところ点々としてきたからのぉ」
「方言めちゃくちゃだもんねぇ」
そうなんだ、おばあちゃんが関西出身なのは聞いていたが、ずっとそこにいたわけじゃなかったのか。どうりで変な話し方をするわけだと思った。
おばあちゃんが真剣に野球を見ているものだから、ぼくたちも静かにしていないといけない気がしたので、黙ってご飯を食べた。
「ごちそうさんー」
おばあちゃんは野球の中継を見ながらだったので食べ終わるのが遅かった。
ぼくとママは食べ終わっていたので、ママが食器を持って台所の方へ行った。ジャーと水道から水が出る音がした。
「ケン坊、茶ぁ飲むぅ?」
「うん」
またおばあちゃんが振り返ってコポコポコポと音がしたあと、二つの湯飲みがテーブルに置かれた。
おばあちゃんはズズー、ズズーとお茶をすすりながらまた真剣に野球を見始めた。おばあちゃんの顔にテレビの画面がちょっと反射してチカチカしている。
しばらくぼくも黙ってお茶をすすっていると、食器を片付け終えたママが白いお皿を持って戻ってきた。
「マサコも茶ぁ飲むぅ?」
「うん、ケーキ食べましょ、ケーキ、ほら箱開けて」
ママがぼくにそう言うと、おばあちゃんはふりかえってコポコポコポと音をさせたあと湯飲みをママの前に置いた。
ぼくはケーキの箱を慎重に開いて、ケーキをお皿に乗せてママとおばあちゃんの前に置いた。箱の中に入っていた透明のフォークも配った。
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