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「ロンンンンーーー」 「アーーーーッ」 「バカヤローッ」  ぼくがおばあちゃんの駄菓子屋につくと、いつものゲームの音が聞こえた。中に入るとまたジャラジャラやっているようであった。  畳の前まで行くとおばあちゃんが僕に気づいた。 「おっ、ケン坊じゃないかえ? どうしたん?」 「いや、ちょっとケーヤクの事で相談があって」 「ほう。かわいい孫が着たから今日は終わりだよ、ほれ、出しな」 「くっそ~……」  きょうはおばあちゃんが差し出した十円チョコをうけとって何枚もの紙のお金をおばあちゃんに渡していた。 「あ~、またヤクザにやられたっ!」  お金を渡し終えたお兄さん達は靴を履き、頭をかきながらボクの脇をすれ違ってお店を出ていった。  ぼくはお兄さんと入れ違いで畳みの上に上がり、テーブルを挟んでおばあちゃんの前に座った。 「茶ぁ飲む?」 「うん」  おばあちゃんが振り返ってコポコポコポと音がすると、ゆげのあがった湯飲みが二つテーブルに置かれた。 「ズズー、相談とは、ズズー」 「うん、じつはね、ズズー、クラスのみんなに駅前のケーキ屋さんのお姉さんを知っているか聞いて情報収集してきたんだ、ズズー」 「ほう、熱心だのう、ズズー、それでケーヤクについて何かわかったのかえ? ズズー」 「それがね、ズズー、駅前のお姉さんのことを知っているのはクラスに六人しかいなくて、ケーヤクについては誰も知らないみたいなんだよ、それか隠してるのかもしれない、ズズー、どうしたらいいと思う? ズズー」 「賄賂じゃ、ズズー」 「ワイロ? ワイロってなに? ズズー、ズズズズ」 「茶ぁおかわりいる?」 「うん」  またおばあちゃんが後ろを振り返ってコポコポコポと音がしたあと、湯気の立った湯飲みが置かれた。 「ワイロっちゅーのはな、なにか情報を得るためにお金を渡す事じゃよ、ズズズズ」  おばあちゃんは後ろを向いてコポコポコポと自分の湯飲みにお茶をたした。 「お金? ぼくお金なんて持ってないよ。お年玉はあるけど……ズズー」 「ふひっ、ふひっ、小学生がお金なんてわたしたらいかんよぉ……こどもなんてお菓子で十分じゃ、ふひっ! ふひっ! ズズー ここにあるお菓子、好きなだけ持っていきぃ、そして言っておやり、お姉さんの契約について情報を持ってきたらお菓子をあげるって。みんなこどもだから我慢できないじゃろうなー、こどもにお菓子の威力は強力やでぇ、ふひっ!ふひっ!ふひっ! ズズー」 「お菓子持ってっていいの? お金ないよ?」 「かまわん、かまわん、ケン坊……おばあちゃんのこと、すきかぇ?」  おばあちゃんの目がギラリと光ったように見えた。 「もちろんだよ」 「よしよし、好きなだけ持っておいき。その代わり、話がすすんだらおばあちゃんの所へ報告に来るんだよ……?」 「うん、わかった。あ、おばあちゃん、カッコイイお兄さん来た? ズズー」 「うんにゃ、さっきのイマイチなおにいさん達しかきとらんよ」 「ちゃんと外見てた?」 「いんや、ズズー」 「外も見てなくちゃダメだよ、走って行っちゃうんだから」 「そっか、そりゃあ失敗したなぁ、あしたからちゃんと見張っておくよぉ、ふひっ、ふひっ」 「じゃ、よろしくね、あ、おしっこ」  ぼくはトイレでおしっこしたあと、ランドセルにあめやチョコレートなど詰めれるだけつめて家へ帰った。
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